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beatmania IIDX DanceDanceRevolution 現在、以下の楽曲が収録されたCDを探しています。 何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、情報提供をお願いします。 beatmania IIDX HONEY♂PUNCH -L.E.D.-G Style MIX- DanceDanceRevolution Still unbreakable(ショート、ロング) SAY A PRAYER(ショート、ロング) Get Back Up!(ロング) Haunted Rhapsody(ロング) HEARTBREAK (Sound Selektaz remix)(ロング) Something Special(ロング) Take A Step Forward(ロング) The Heavens Above(ロング) Dance Partay(ロング) El ritmo te controla(ショート、ロング) Surrender (PureFocus remix)(ロング) Tell Me What To Do(ロング) Wings of an Angel (Fly With Me)(ロング) UNBELIEVABLE (Sparky remix)(ロング) Win the Game A Geisha s Dream (Ruffage Remix) On the Night of a Still Wind Curry Up Let s Get Away(ロング) dreaming can make a wish come true(ロング) Private Eye(ロング) SAY IT AGAIN ほか、DDR Universe各種収録曲およびDDR ULTRAMIX1~4各種収録曲
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しかし彼の耳は生き延びて、男が怒鳴るその声をはっきりと聞いた。けれどもそれが自分に向けられている 気がまるでしなかった。 「どうや、思い知ったか!」 男は自分の目の前で今は無様に圧倒されている、全ての腹の立つ、自分に恥をかかせた人々や物事に 向かって、そう怒鳴りつけた。 実際のところ彼らの顔や一つ一つの出来事はほとんど忘れてしまっていたが、先の彼の拒絶をきっかけに、 漠然と、常に自分の人生がうまくいかなかったことを思い出して、自分をこんな風にしてしまった、自分を この場所まで導いてきた全てのめぐり合わせというものが、ふと強烈に憎くなったのだった。 しかし今の自分には金があり、酔いに酔ってこれ以上ないほどに強くなっている。男には今度こそ自分を 抑えつけてきた目に見えないものを、逆に捻じ伏せてやれる、そのような自信があった。 「馬鹿にしやがって、畜生」 男は口汚く吐き捨てると、興味を失った彼の身体を他所へ放り投げた。どさりと地面に崩れ落ちるのと 同時に彼は息を吹き返したが、最初の呼吸は蛇腹の空気入れを踏んだような音がした。心臓の動きに合わせて 鼓膜が震え、巨大な機械が何かを断絶するような音が繰り返し聞こえる。男の手が離れてしまっても絞めつけ られていた喉はゆっくりとしか開かないので、すぐには楽になれなかった。 嘔吐(えず)くような咳の音が深夜の路地に響く。 「……どうするんや」 ぐったりと地面に横になって息を整えている彼に向かって男は言った。今まで通りすがりの人間のことなど 忘れていたくせに、酔っ払いは脈絡なく先の諍(いさか)いを蒸し返すのだった。 彼が施したお粗末な看病やポケットティッシュの礼に男が差し出した得体の知れない現金を 受け取るか、否か。 「……受け取ります」 彼は咳が出ない隙を見計らって早口に言った。 「そうか、それでいい」 男は彼がよろよろと壁を伝って立ち上がるのを手伝い、そのまま手をとって重ねた紙幣を握らせた。これで 満足だった。すると自分の思い通りになってくれたこの優しい人とこれっきりになってしまうのが途端に惜しく なって、何か約束をしたくて堪らなくなった。酔っ払いは自分の欲望に対して素直なものなので、先ほど自分が 首を絞め殺そうとした相手を脅すのではなく、しみじみと懇願した。 「俺は敵が多いからな、これを受け取ったら、あんただけは俺の味方になってくれよ」 彼は黙って肯いた。打算のために従順な姿勢を見せているわけではなかった。 暗がりで、一方向からさ青(お)い光が強く差しており、血塗れの男が彼を置き去りにして目紛るしく立ち振る 舞う、これは映画だった。 その中で流れる時間に対して自分が無力であることを、彼は既に思い知らされている。だから最早賢しらに ものを考えて疑ったり抗ったりしない。 そうして彼はただ子どものように光る方へ吸い込まれてしまっているだけなのだ。 そこで行われたことのいくつかは次第に忘れられるが、あるものはたとえ記憶の中で姿形が溶けて しまっても、いつまでも彼に残り続ける。
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小銭の鳴る音の後そこから現れたのは、分厚い紙幣の束だった。 彼が再び目を剥いて驚いている内に、男はそれを無造作により分けて勢いよく突き出してきた。 「どうもありがとう。少ないけど、持っていって下さい」 男は相変わらず愛想の良い酔っ払いだった。 彼は油断していたところを突かれて口ごもり、だらしなく腕をぶら下げて立ち尽くしていた。けれども ぼんやりと男の身なりを眺めていると、野暮ったいズボンと、掠り傷に砂の粒が入り込んだ運動靴とに札束が 全く馴染んでいないことに気がついて、面倒事になりそうな予感がした。そもそもこの男からこんな金を 受け取る謂れはないのだ、と彼は自分に言い聞かせ、都合のいいことを考えてにやつかないように歯を 喰いしばった。 「そんなつもりじゃなかったんです。本当に、結構なんで」 社交性というものが乏しい彼には碌な断り方が思い浮かばず早口でそれだけ述べた低い声には、自分の中で 芽生えたかもしれない欲から目を離そうと意識し過ぎる余りに、迷惑そうな気色が隠されるどころか男に 向かって強く押しつけられていた。ただし相手の目を見てそんな態度で物を言う度胸など彼にはなかったので、 頭を下げているとも見えるように深く俯いている。 「…おい」 男はその声で一瞬にして彼を恫喝した。反射的に彼が怯えた目で窺うと、たった今まで男の表情から 溢れていた愛想や親しみといったものが、いつの間にかふつと完全に消え失せていた。ぞわりと気味の悪い こそばゆさが身体の中心から湧き上がり一斉に全身へ行き渡ったのと同時に、彼は自分がどうしようもない 失態を演じたのだと直ちに理解した。 「俺が受け取れって言うたんやから受け取れ。逆らう気があるんやったらかかって来い」 低く唸るようにそう言うや否や、男は小刻みに二発突き出した拳をわざと彼の目の前で止めて一々反応する のを面白がった後、うまく勢いのついた三発目を確実に鳩尾へ叩き込んだ。彼は力の加えられた方へ数歩 後ずさり、打撲の強烈な痛みと喉が詰まって酷く噎せ返ったせいで、訳が分からないまま蹲って地面に手を ついた。頭に血が昇って異常に熱い。汗で湿った手のひらに尖った小石がへばりつく。 彼は真っ赤な顔で吐くように咳き込みながら、生身の人間に一発殴られただけでこうも動けなくなるもの なのかと自分の弱さを思い知り、驚いていた。 「情けないなぁ」 男はまさに彼が考えていたのと同じことを言った。しかしいざ指摘されると、決して自分を誰かに 打ち勝てるほど強いと認識していたわけではなかったのに、堪らなく恥ずかしく、悔しかった。屈辱という のはもっと志の高い人間のものだと彼は思い込んでいたが、案外原始的な感情なのかもしれなかった。 「立てよ」 男が彼の前髪を力任せに引っ掴む。これで全身を吊り上げられては堪らないと彼は思わず男の腕を押さえ 込み、自分の足でよろよろと立ち上がったが、その瞬間に手を振り払われ、気付くと背後の塀に突き 飛ばされていた。 「……人のこと舐めとったら、ぶち殺すぞ」 男の両手が彼の首を捕らえ、叫ぶ間も与えず握り締められた。腹の大きな二本の親指が喉仏に食い込み、 彼に強い吐き気を催させる。彼の息を止めるのは首の背面から突き上げてくる方の指だった。 すぐ近くで眠っている人々がいるのに、自分が殺されそうになっているのを知らせることができないという ことが、彼は俄かに信じられなかった。けれどもこんな呻き声では誰も目を覚まさない。自然と顎が開き、 ぐったりと舌が伸びて言うことを聞かない。 彼の目の前では、街灯にさ青(お)く照らされた男の顔がある。今度の喧嘩では思い通りに暴力を振るい、 相手を捻じ伏せることができたので満足そうに、歯を剥いて笑っている。歯や目玉の表面、額から湧き出す 血潮といったあらゆる男の体液が、きらきらと繊細な光を反射している。光のせいで小さく震えるような 血潮の流れさえ目でとらえることができるようになっている。 彼は男の息から酒の揮発する感触を皮膚に受けながら、それらから目を離すことができずに、むしろもっと 細かいもの、どうでもいいものを追ってしまうのだった。目蓋を圧迫する赤紫色の腫れ物が外側へいくに つれて淡い虹色になっていく様子だとか、頬についている何かを押しつけた跡のような古い傷だとか。 “こんな夜中に意味もなく外を歩き回ってるような奴は、刺されようが殺されようが文句なんか 言われへんのや” なぜか彼はいつか子どもの頃に父親が新聞を広げながら言ったことを、頭の中で繰り返し思い出していた。 死ぬかもしれないという目に見えない可能性だったものが、いよいよ彼を現実に覆い尽そうとしていた。 もうよく分からなくなってくる。 “こんな夜中に意味もなく外を歩き回ってるような奴は、刺されようが殺されようが文句なんか言われへん” ということは、自分が死んでしまうのは仕方のないことだったのか。 けれども今もし彼が口を利けたなら、阿呆のようにみっともなく、死ぬ、死ぬと泣き喚いているに違い なかった。こんな得体の知れないものが怖くない人間などいない。死ぬことを望んだり喜んだりするのは単に 負担から逃れられることに対してそうしているのだ。生きている人間と死んだ人間の境目をわたるときこそが、 人の過ごす時間の中で最も恐ろしい瞬間である。 いつの間にか彼の視界は白い光が溢れかえって、もう男の血塗れの顔もぼんやりとしか見えなくなっていた。
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その瞬間、街灯の柱の陰から、倒れ落ちる最中の人間の半身が光の下に突然ぬらりと現れて、しかし その身体は化け物じみたでたらめな身のこなしでやがて平衡を取り戻した。 弾かれたように彼は短く声を上げ、息を呑んだまま剥き出しの目でその男に見入った。旋毛を向けるように 項垂れていた男が鬱陶しそうに右目を拭い上げたとき、割れた額から湧き出した血潮がその顔中をべったりと 濡らしていたからである。 男はよろめきながら大股で踏み込んできて、立ち竦んだ彼は瞬く間にわずかな距離をつめられてしまった。 近付くと酒の揮発する感触が分かるほど男は相当に酔っていたが、やたらに陽気らしく、すいませんと言う 声は愛想が良かった。 「血が目に入って前が見えへんかって」 そう言った側から男は手のひらで目蓋を擦り、しきりに瞬く。違和感があるのは、そこに鬱血してできた 赤紫色の腫れ物が目を圧迫して半分隠していることにも原因があるのだろう。額の他にも同じような腫れ物や その上の小さな切り傷が顔中に散らばっていた。 「何か拭くものを持ってませんか」 ふくもの、と彼は気が抜けたように繰り返し、ポケットに駅前で受け取ったままにしていたティッシュが あることをゆっくりと思い出していた。恐る恐る手を伸ばしてそれを渡してしまうと、男は嬉しそうに礼を 述べて、本当に目や口の周りだけ拭って全く見当違いのところを止血のつもりで押さえていた。 しかし手応えがないことに気付いたのか、"酔っているのとあちこち痛いのとでもうどこから血が出て いるのか分からない"と彼を笑わせたそうに独り言をいって、斑点のついた紙で生乾きの指を拭った。彼は この後自分が何を求められるのか予感してどうしてもそれを拒絶したかったが、その方法を思い浮かべている 暇はなかった。 「悪いけど見てもらえませんか」 そう告げて、血を拭う為に彼が与えた紙を、男が同じ意図で差し出したのが先だった。彼は緊張で動悸さえ 感じていたが、怪我人の切実な頼みを断ることはできなかった。けれども男の目つきに痛みなど読み取れず、 自分の臆病さをからかってにやにやといやな笑いを浮かべているだけのように思われてならなかった。彼は むしろ、だらだらと血を流す紫色に腫れ上がった顔をまだ何度でも殴られる光景や、その手に受ける感触が 独りでに想像されて、腹を立てる余裕もないほどに寒気立っていた。 身体を震わせて拳をきつく握りしめると、寒さで感覚が麻痺した手の皮が乾いて引きつっていた。 それを覚悟に男からまだ使っていない紙を受け取って引き出し、ここですね、と言いながら分厚く重ねて 血潮の溢れ出る額の傷口に触れる。白い紙は見る間に赤黒く滲んで貼りついてしまい、到底この量では追い つきそうになかった。ぐっしょりと濡れた紙片から血潮の鉄の臭いが立ち昇り、彼の喉の奥をくすぐって軽い 吐き気を催させる。 「……あの、救急車呼びましょうか、それ縫わなあかんような怪我やと思うんですけど」 「いや、そこまでしてもらわんでも大丈夫です、朝になったら自分で病院行けますから。それにしても世の中 腹の立つ奴もおればこんないい人もいてるんやなぁ」 男は自分が四人を相手に喧嘩をして、最初の一人は倒したがその後押さえつけられてひどく殴られた挙句頭を 壁に打ちつけられて、こんな怪我を負ったのだということを興奮して喋りたてた。 大丈夫なわけがない、と言い放ちたくなる。下らない話を聞いている内に、男が本当にただの酔っ払い なのだと彼はいよいよ思い知らされて、あの気味の悪さが完全に醒めかけていた。 この男の半身が何もない所から突然現れたときには、ひとつの完成された光景を踏みにじった人間の末路を 見る覚悟さえあったのに。彼はこれ以上男に構うのが煩わしくなった。 翻弄されるほどの恐怖というのは、安全な所から眺めると、非常に面白いものである。それはある種の 人間がどうしようもなく惹きつけられて執拗に抉り出そうとしてしまう、陰気な好奇心の対象だった。 そのように感じられるのはこの男のおかげだったが、光に曝されて不気味な気配がさっぱりと抜け落ちた この人に、これ以上感情を揺さぶられはしないだろうと彼は思った。夢中になっていたものを台無しにされた ことも確かだったので、もうどこかで勝手に行き倒れてくれ、他の人間に何とかしてもらえ、と当たり 散らしたい気になっていた。 「……そうですか」 彼は相槌を打つふりをして自分の仕事についての男の話を断ち切り、できるだけ残念そうに、もう 行かなければならないのだと告げた。 「あぁ急いでるんですか、でもちょっと、待って」 男は彼が歩き出そうとするのを察知し、その前に腕を掴んで止めた。危害を加えるつもりではないと 分かっているのだが、この男に腕を一本押さえつけられたことに、彼は未だに胸騒ぎを覚えずには いられなかった。 しかしポケットを探る為にその手はすぐに離された。
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「どうしても、行くの……?」 静かな、せせらぎの音。森はその身を振るい、時折ざわざわと自然の喧騒を作り出す。その喧騒は、じわりと心に暗雲を落とし込んだ。木漏れ日は時折目に眩しく、飛び込んでくる光は痛みになって私の目に突き刺さる。微かに汗ばむような、初夏の空気が煩わしかった。 静寂が、そっと空気を満たしていく。せせらぎの音だけが僅かに耳をくすぐって、寧ろ無音の方が余計心地いいのに、とふと思った。そう、こんな日は余計にそう感じてしまう。 私の瞳は、そんな静寂と目に刺さる光を抱きこんだまま、うっすらと潤んでいた。それだけのせいなんかじゃない――お互い解っているのに、眩しいね、と言葉を交わした。 穏かな風と、それに似合わないまでの晴天。雲は白く白く、一寸の陰りも見せない。空の蒼さのせいで、その白さは一層主張された。雨ばかりの初夏の季節、ここまで晴れる日は珍しい。寧ろ、雨の日だったら少しは良かったのに。 そんな、明らかに初夏の風景の中――一つだけ、その景色から浮いている大木が、存在していた。浮いているのに、いや、浮いているからこそその大木は、ものすごい存在感を持っていた。 ぶわりと風が舞い上がるごとに、花弁は大きく風に巻き上げられ、そのまま地面に落ちていく。その繰り返し、散り際の桜。妙に、それが切なく見えて。私はそっと指先同士を握り合わせた。 そう、この桜のせいでもあった。終わりを感じさせるように舞い落ちていくこの桜さえなければ、私はそのまま別れを受け止められたかもしれない。舞い落ちる花弁を見る度に、私は孤独を感じてしまった。 桜は散り終わり、そしてそのまま貴方のいない夏が来る。夏が来て、私はそれからどうするの? 貴方がいなくなった後、ただ一人で私は夏をどうやって過ごすの? 二人で夏、水をかけ合ったり魚を追いかけて転んだりした川辺。私たちが過ごした夏の、思い出が詰まった場所。そこで見送ってほしい、と頼んだ貴方は何を考えていたんだろう。 ひとしきり、私たちは見つめあっていた。私の疑問に、貴方は答えない。その代わり、風が音を立てて木々を通り抜けていく。静けさを余計強めていた水音の川辺を、貴方は目でそっと追いかける。その音は、耳に馴染んだいつもの音。ずっとずっと、貴方と共に聞いてきた音。 ふと、貴方は目を桜にやる。何かを確かめるように、静かな表情で散り行く桜を暫くの間見つめていた。そして、うん、と小さく一言だけ答えた。寂しげな表情のまま、貴方は言葉を紡ぐ。 「どれだけ悩んだか忘れたけど……」 糸を紡ぐように、貴方は言葉を吐き出す。その言葉は決して、その場の思い静寂を埋めたいが為の適当な言葉ではなかった。 「決めたから。俺、行くよ」 静かに、さっきのようには目を逸らさず、じっと、私だけを見ながら貴方は私に、そう告げた。 しん、と静まり返っていたはずの空気が、その言葉で微かな震えを帯びた。ぴぃん、と張った空気が一瞬で溶けた。その途端、一気に風の優しい匂いや木漏れ日の暖かさ、葉擦れの心地よさが、体中に響いてくる。森を駆け抜け日差しの中に出たかのように、ざあっと、自分を覆っていたいやな雲が晴れたような感覚を私は感じていた。 その温もりと共に、熱い物が瞼の奥からこみ上げてくるのを感じた。繋がっていたはずの貴方が、さっきまで遠いと感じていた。出て行く側と出て行かれる側、お互いにわからない何か――境界線をずっと引いていた。夢を追って出て行く気持ちも、ただの裏切りにしか感じなかったはずなのに。 それなのに、目の前にあった壁が砂になって崩れ落ちるように、境界線は簡単に消えて。涙と共に、溢れ出したのはたった一つの気持ちだった。 貴方が決めた事なんだから、応援してあげたい。 自分の寂しさも、苦しさも、出て行った後の日常も――そんな事は、どうでもよくなっていた。ただ、一番の親友として、応援してあげたい。行くんだ、と目がそう告げていたから。強い決意を湛えながら、それでも潤んだ瞳に、貴方の気持ちが映っていた気がしたから。 それでも、そんな風に思えても。否応なしに涙だけは溢れて――…… 気がついたら、しがみつかれていた。震える体が、私にしがみついていて。肌に立てられた爪が少し痛くて、それが掻き消えない現実を感じさせる。 貴方の温もりを、こんな近くに感じたのは初めてで。そのまま行かないで、ずっと側にいて、そう言いたかった。このまま連れ戻したかった。貴方も、同じ気持ちだったと今ようやく気づいて。別れたくなんかないのに、決めたから、って言った瞬間。貴方はどんな気持ちで、どんな強さを胸に秘めて言い切ったんだろう。でももう、そんな事はどうでも良くて。ただ、同じ気持ちでここにいる……それだけで、私には十分だった。 涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげて、ふと桜を仰ぐ。散り際の桜――その桜は、もう微かに緑に色づき始めていた。さっきまでは気づかなかった、その緑は、終わりじゃなくて始まりの色。緩やかに吹く風は、暖かくその桜を緑へと誘っていて。立ち止まったはずの現実が、大きく動こうとしているのを私は感じた。 行かないで、その言葉は喉まで出掛かっていた。さっきまでとは違う貴方、震える肩が少し弱弱しい。帰り道に身体を向け、私から手を離そうともしない。半分止めてほしい、そんな気持ちがあるのだろう。そんな貴方に、私は何を言える? もう一度だけ、仰ぎ見た桜。それは――春のままでいる事を拒んで、夏へと歩き出そうとしている桜。 答えは、決まっていた。 「行きなよ、……応援、してるから」 口から出た言葉は、私の意志かどうかもわからなかった。木漏れ日が眩しくて、心地よくて――今はもう、静寂も感じない。胸の奥には確かに、寂しいって気持ちは存在する。それでも、貴方には夢を叶えてほしくて。引き止めるのは、嫌だから。 ふわり、と私たちの間に風が吹いた。川の水は、気持ちよさそうにこの天気の中川下へと走って行く。桜はざわりとその身を震わせ、木々も緩やかな気候の中身を奮い立たせそこにどん、と構え続ける。 貴方は、そんな空気に気づいたのか赤い目で空を見上げる。湿気た空気はもう感じられない。空は晴天、暖かくて眩しい日差しが、そっと全身を撫でるように、それでも強く私たちを照らす。貴方は私に視線を戻し、強く頷いた。 二人して目に差す光を受け止め、またそっと見つめあった。お互い、笑顔を浮かべたまま。お互いに差し込む光にも負けずに私は、貴方に思いっきり笑いかけてみた。すぐに貴方の表情で、その返事は返ってくる。――そう、これからの未来は、自分たちで作れるはずだから。 『お互い、強くなろう』 同時に同じ言葉を、お互いに告げる。そして、今日一番、いや、今までで一番の笑顔を貴方は浮かべた。きっと、私もそうだったんだろう。 緩やかに舞う桜吹雪の中、私は帰り道へと視線を向ける。この先、何があるかなんて解らない。 涼やかに響く葉擦れの中、貴方は行く道へと視線を向ける。この先、何があるかなんて解らない。 私は手を高く上げる。それに貴方もすぐ気づくと、手を同じように高くあげた。そのまま一歩、前に進んで――威勢のいい音を立ててお互いの手のひらが交差した。いつもの合図は、いつもよりもずっと気持ちのいい音に聞こえて。 そのまま、一歩。また一歩。ゆっくりと、お互いの行く方向へと歩を進める。一回も振り返らずに、私は前を見つめながら歩き始めた。そう、それが私の進む道だから。 緩やかな、せせらぎの音は耳をくすぐる。森はその身を奮い立たせ、心地よい木漏れ日と清々しい程の葉擦れを溢れさせる。眩しいはずの木漏れ日は、初夏の空気と混じって目に暖かい光を投げ込む。痛みさえ感じさせたはずの日差しは寧ろ、全身に暖かくて思わず日光浴さえしたくなるほど。 振り返らずに、私は勢いをつけて走り出した。初夏にそぐわない桜が、切なかった。親友との別れが、胸を締め付けて苦しかった。だけど、何故か、私は幸せを感じていた。 初夏の日差しの中、別れの時に見た風景の一部分――雰囲気から浮いた、あの惜別の桜の色を、きっと私はいつまでも忘れない。
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夜が更けて一層空気が冴え渡っている。 彼はこの辺りにひと塊りだけ残っている昔ながらの木造家屋の壁や門構えの間を猫背気味に、腹の底に力を 込めるようにして歩いていた。木の素材が光を吸って地面は暗く、ぽつりぽつりと植えられている街灯が頼り だった。そこは人が擦れ違えるだけの狭い路地で、民家が少しずつせり出したり引っ込んだりしているのに 沿って伸びているので、わずかに曲がりくねっていて先が見えなかった。そのせいで奥行きの距離感が つかめず、いつもここを通るときにはとても長い間歩き続けているような気がした。 真っ直ぐ進む他にやることもないので、やはり彼は自分が書くものについて考えずにはいられなかった。 今まで何度も別の映像を言葉に置き換えてきたが、まともな結末を与えられたものは一つもなかった。 きちんと終わりを迎えるべきであるし、終えられないことを情けなく思う気持ちはあったが、しかし そのことで鬱々としてしまうのはどうしてなのか。 はじめからこれは自分の執着心を慰めるための作業に過ぎないのではなかったか。そう割り切ってしまう ことができないのは、中途半端なものを嫌がる性質のせいだけではない。ものを書くときに働くあの勘を 燻らせておきたくなかった。 結末さえあれば自分の書くものは何か意味のある作品になるに違いないと思い込んでいた。だから小説で 身を立てたいだとか、書いたものを人に評価されたいとかいう浅はかな展望を未だに捨てられないのだった。 けれどもあんなものは小説と呼べるような代物ではないと分かっている。はっきりとした展開も主張もない、 ある個人の妄想をありのまま書いたものを誰が面白いというのだろうか。 彼は苛立って力任せに歩きはじめていた。何となく息苦しくなって、きつく噛み締めていた奥歯を ぎこちなく緩めて喉の底から溜め息を吐く。しばらくして、この程度の薄っぺらな期待は誰でも持っているし、 それをさも深刻そうに思いつめるほど自分の野心の強さをさらけ出すことになりそうだと思い直した。これは 彼には結論の出せない、考えても生活の妨げにしかならない類の論題だった。 彼は頭を切り替えるために、深くゆっくりと瞬いた。 そのときふっと風が通り過ぎて、二月の深夜の寒さと空腹を堪えようと俯いていた彼の鼻先を、何か白い ものが掠めていった。 それは紛れもなく彼への誘惑だった。 彼は惹きつけられるままに立ち止まり、そして見上げた。 すぐ先にある家の、頭の高さほどの塀の内側から、ぽたぽたと点を置いたように花をつける梅の枝が 零れ出て、ちょうどそこに寄り添う街灯にさしかかり、その光のさ青(お)い陰に、梅の白い花が染められて、 枝は透明な骨のように、物凄くされているのを。 彼は自分と梅の木の間の数歩の距離がこの光景を成しているのだと感じて、自分が"けれども彼女らが ここで永遠に立ち尽くすだけの存在になれないことは、一瞬彼女を通り過ぎた幸せがもたらした悲惨である"と 書いたことを思い出した。そして彼女がそうするはずであったように、彼もまたすぐに再び一歩 踏み出していた。
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※井伏鱒二「夜ふけと梅の花」をもとに書いたものです。 "ふと振り返ると、両側から押し迫られて狭く薄暗い、これまでやって来た道のりの先だけが針の穴のように わずかにひらけていて、明るい海が見えた。とても鮮やかといえるような景色ではなく、咽返りそうな白い光の 中にあらゆる境界が溶け込んでいて、うっすらと埃を被っているようであり、眺めているとこちらの意識まで ぼんやりと濁ってしまいそうである。 この光景に懐かしさを感じられるほどの経験など彼女にはなかったが、どうしてなのか、これらをもうじき 手放さなければならないことが酷く耐え難く思われた。もちろん彼女は行く。行かないということに現実として 耐えられるはずがなかった。 けれども彼女らがここで永遠に立ち尽くすだけの存在になれないことは、一瞬彼女を通り過ぎた幸せが もたらした悲惨である" 彼はもうこれ以上書くことなどできないくせに、しつこく黒い芯で紙を突いて、何かの拍子にこの続きを 思いつけるつもりでいた。布団の中で腹這いになっているので頭は火照るのに、白い紙の上へ晒した指先 だけが冷え固まっている。 これは子どもを生むことを恐れる若い女が、自分の娘を当たり前に慈しみながら二人で坂道を上っていく という幻を見る話なのだが、幻から覚めた彼女がどこに居るのか、何を思っているのかという件になると、 彼の目の前は真っ暗になるのだった。 彼が書くためには映像が必要だった。それは光景を見渡せる全体像であったり、人物の視野だったり、 映像でありながら聴覚や触覚そのものであったりするのだが、これらの別々のものが、既にあった時間の ように、目蓋の端辺りできちんと流れていくのだった。 この映像のようなものを彼は放っておくことができなかった。映像の原形はふいに思い浮かんだり、 眠っているときの夢であったりするのだが、一旦その存在を意識すると、忽ち完成させることに偏執して しまうのだ。それは際限なく映像を繰り返していく内に作中の人物と一体化し、いつか経験した自分の感覚で 肉付けしていくという終わりのない作業のはじまりだった。 彼は偏執から逃れるために、何とかして再現可能な形でこの映像を頭の外に取り出さなければならなかった が、逆に映像が彼にそう要求する力を感じることもあった。 そこで彼はごく自然に書く(文字にする)という手段をとった。そのまま映像にすれば良いのかも しれなかったが、あの光景をそっくり作り上げるために何をするべきなのか分からなかった。けれども映像を 自分の言葉に置き換える作業では、彼は自分の持つ勘を働かせることができた。使いたくない言葉を切り捨て、 ふさわしいものを選び取る基準を持っていた。段階を踏むと現れるささやかな仕掛けを考えることができた。 しかし筋道を立てて書きはじめるわけではないので、いつもこうして映像がぶつりと途切れてやむなく 終わる。形が残って再び辿れることが分かると彼の執着は慰められて、敢えて思い出さなければ意識に上って 独りでに繰り返したりしなかった。 低い天井に吊り下げられた蛍光灯から、じりじりと虫の鳴くような音が聞こえる。夜中の二時を回って 目蓋も半分に垂れ下がっているのだが、彼はそれ以上に空腹感が耐え難くなっているのに気付いた。痛いのでは ないけれど、本当に飢えているとしか言いようのない辛さだなぁと言葉の妙に感心する。こんなときに限って 家の中に腹が膨れるようなものは何も残っていなかったので、彼はやけになって、このまま朝まで空腹を抱えて やり過ごすよりは、どんなに寒くても今すぐコンビニにでも出かけていって温かいものを食べて満足したい 気になった。 まだ面倒臭がる気持ちも多分にあったが、彼は自分でも驚いたことに、それから床に転がっていた眼鏡を かけてのろのろと身支度をはじめていた。
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参加者減少の傾向に歯止めが掛からない状況が続いていますが、特に若い人の新たにモータースポーツを始める人が少なくなって来ていることは間違いありません。 しかし、この傾向はモータースポーツだけではないのです。これは、マスメディアで大々的に取り上げられているメジャースポーツである一部のカテゴリーを除き全てのスポーツに言えることなのです。いいえ、野球やサッカーですら個人運営のアマチュアチームでは新人の確保に必死になっています。 最近そのような悩みをかかえつつ、それらの状況を好転させるために立ち上がった方と出会うことが出来ました。 この方は、スポーツならジャンルを問わず、チームの広報や成績の発表やチーム員同士の連絡ができるポータルサイト「スポラジ http //www.sporadi.jp/」を先月から始めたのです。 これまでは、同様の新聞を発行していたそうですが経費が莫大にかかることから、WEBサイトに切り替えたそうです。 サイトの運営経費は全て、スポンサーからの費用で賄われていて、登録するチームにとっては一切費用が掛かりません。 私たちは、このサイトにモータースポーツのチーム(クラブ)も登録できるようお願いしたところ、あっさりOKが出ました。現在は、カテゴリーに「モータースポーツ」は設定されておらず「その他」のカテゴリーに登録されることになりますが、次回バージョンアップ時は「モータースポーツ」のカテゴリーも追加していただけそうです。 そこで、皆さんにお願いですが、1チームでも多くのクラブに登録していただくことによりモータースポーツの裾野を広げませんか?また、これをきっかけに新入クラブ員が入ってくるということもあるかもしれません。 基本的に、モータースポーツをする人は、他のスポーツにも関わっていた人が多いと思いますので、その可能性も高いと思います。 チームの登録(HPの作成は簡単で下記をご覧ください)http //www.sporadi.jp/blog/view/1 参考例として、モンテカルロオートスポーツクラブはこんな感じです。 写真だけでなくテロップや動画も無料で掲載できます。 動画は50MBまでですが、15分程度でも可能でした。 http //www.sporadi.jp/teams/view/74
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依頼主 ヨウセン 出現条件 女装の極意クリア クリア条件 以下のアイテムを持ってくる特大シシケバブ 成功報酬 神技強化 依頼時 哮天犬がお腹をすかせてしまって。この子は上質の肉が好きなんですが、特大のシシケバブ、持ってきてもらえませんか? クリア時
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翻訳規則 (試案) 人称 以下の人称はあくまで原則です。状況によっては原則を無視した方が適切な場合もありますので、その場合は適宜対応してください。 1人称 自分、私 自分の性別がどちらになるか分からないため、性別が限定されるような1人称は使用しないでください。ただし、自分の性別が特定できるような場合 (Perk Black Widow Lady Killer Cherchez La Femme Confirmed Bachelor を持っているとき専用のダイアログ等) はメモ欄にその旨を明記した上で、性別に依存した1人称を使用できます。 2人称 あんた、おまえ 荒廃した世界ということで、やや荒い言葉遣いである「あんた」や「おまえ」を使用します。ただし状況によっては「あなた」なども使用できます。 3人称 あいつ、そいつ (単数) あいつら、そいつら (複数) 2人称の説明と同様に、荒い言葉遣いを使用します。状況によっては「彼」「彼女」や「彼ら」なども使用できます。 固有名詞 翻訳しないでください。